テユベスクの歌
テユベスクの歌
「ベルリンの壁が壊れたからって、世界が変われる訳じゃないのに」
社会主義の崩壊から10余年。経済不況に喘ぐロムニアで、再び旧制復古の声が上がり始める。
暗躍する前政権の残滓と、結託する旧ソの勢力・・・裏で蠢く地下組織が、民衆を煽動しているという。
事態を重く見た西側諸国は、諜報機関の増派を決定。ジンロウはその一人として、再び祖国へ舞い戻った。
「 冷たい鉄のカーテンが、東と西を分つまで。帳の無いこの白夜よ、せめて続いて二人を照らせ」
セクリタに身を寄す少女チェチェは、その潜伏するジンロウへ、淡い恋心を抱く。
青年は情報と信任を得る為、少女は純粋に恋慕の故、事情は違えど深まり行く二人の関係。
しかし、西側諜報員の存在に気づいたセクリタは。これを抹殺すべく、ジンロウの粛正を全域に通達した。
「やり方は分からないけど、お願いどうか一度で良い。絵本のようなハッピーエンドを、ボクに見せて」
だがその命に背くチェチェは。愛する者を守らんが為、自ずから銃を手に取る。
一方ジンロウは。組織の一員であるこの少女への、愛疑相反する思いの中葛藤に揺れていた。
青年は「しんじてあげたい」と。少女は「しんじてください」と。
深々と雪が降り積もる中、終わりを告げる賭命の喜劇・・・テユベスクの歌。The song of Te iubesc.
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テユベスクの歌・第一話
テユベスクの歌・第二話